面接担当者が嘘をついて採用するのが常の大手スーパー

大学時代、近所の大手スーパーで事務アルバイトを募集していました。ハローワークではなく、求人雑誌とウェブサイトでの募集。そこに書かれていたうたい文句は「丁寧に指導します」「力仕事は一切ありません」「接客はなし、データ打ち込みと伝票チェックのお仕事」「残業無し、希望休の相談に応じます」と言ったもの。

当時の私はスーパーの店員さんを見ていて、キツそうな仕事だなあ、私には出来ないな、と思っていました。いつでも小走りに、重いカートを引いて、品出しをしたり日付をチェックしたり。だけどお客さんに何か聞かれたり頼まれれば「ハイッ」と明るく丁寧に対応しなければなりません。レジ打ちについても、お金のやり取りですから間違いはあってはなりませんし、変なことを気にしたり仕事の邪魔をするお客さんを見ることもありましたから。

それに比べると、事務所から出ることも無く、PCの前に座って出来る事務パートなら私にもできそうだな、と思ったのです。時給は安いけれど、アパートから近くて通勤が楽でした。求人担当者の方に電話して、履歴書持参で面接。この時お話した人事担当者は、三十代後半くらいの綺麗な女性で、いかにもキャリアウーマン! という感じでした。スーパーのバックヤードってかなり殺風景なのですが、パンツスーツを着たその人が颯爽と現れただけで良い職場に見えてしまうぐらい。

この人が説明した仕事の内容は、ウェブや雑誌に載っていたものと同じでした。主な仕事は仕入伝票を定型フォームへの打ち込むこと。独自のソフト画面を開いて、従業員の勤怠管理データや売上集計を出力したり付け合せをすること。ただ、私が怖かったのは、お客様とのトラブルでした。そこで、「接客は一切なし、ということで良いのですか?」と確認。あなたが店頭に出ることはまずないです、と彼女は言いました。ただ、店長や社員に急ぎの用事が合ったり、急な来客などを案内したり呼び出しをする事があるから制服を着て貰います、とのことでした。「誰も居ない時に事務所にお客さんが来られるかも知れません、でも、あなたは正しい敬語も使えるし、明るくハキハキしているから、大丈夫でしょう。ご用件をお聞きして、先輩を読んで来ればそれでいいんですよ」とにこやかに励まされ、それぐらいなら・・・と安心して、働き始めることになりました。

ところが。初出勤時から驚きの連続でした。仕事を教えてくれる先輩たちは、というより、全従業員がいつでも忙しくぱたぱたと走り回り、相手が新しく入って来た人であろうがなかろうが、ぱっと現れて自分の用件だけを言って消えてしまうのです。PCの前に座って、マニュアルを読んで・・・という仕事の覚え方ではありません。実際に伝票を手に、隣に立った先輩が早口に話しながら画面を操作するのを見て、それだけで覚えなさいと言われるのです。やってみると簡単なソフトなのですが、店舗名や商品名、担当者名や業界用語など、固有名詞が解らない私にとってはちんぷんかんぷん。忙しい先輩に何度も聞き直すわけにもいかず、メモをしようとすると「そんなことしている時間ないから!忘れたら後で聞いて!」と叱られる。だけど数日後に訊き直すと、「どうして覚えてくれないのかなぁ?」と嫌な顔をされるのです。

従業員同士がお互いに話す言葉も、刺々しく荒っぽく、声が大きい・気が強い方が勝ち、といった感じ。店頭でお客様に見せる態度とはまさにうらはらでした。それでも、仕事覚えるまでは、と我慢していました。

酷いと思ったのは、直属の上司に「どんな仕事でも出来るようになりなさい」と、お掃除も品出しも電話対応も押し付けられた事です。座って仕事していられるのは5時間のうち一時間もなく、雨の中トラックから降ろされる品物を検品したり、お客様用の傘を片づけたり、駐車場に呼び出されて、お客様が落としたという鍵を探すよう言われたり。次々と雑用を押し付けられるのです。

新人は、汚い事や重いものを避けてはいけない、というのは正しい教訓かも知れません。けれども面接時に約束されたこととは随分違います。私が耐えきれず辞めることになったのは、希望の日に休みがとれないことが解ったからです。予約した歯医者に行ったり、たまにしか会えない人と約束したりで、月に2日ほどの希望を提出しましたが、けんもほろろに断られ、生意気だとさえ言われました。月に5日まで希望を提出して良いと言われたと抗議したら、そんな筈はないと。

面接担当の人事の人は、本社から来るだけで、そのお店には居ないのです。そして人事の人は、上司に対して「私はそうは言っていない」と。完全に私が聞き違いをした、自分に都合よく受け取った、ということになりました。私は簡単に嘘をつく「キャリアウーマン」に腹が立ち、また責め立てられる辛さに泣き出してしまい、すっかり心が折れてその月末に退職。 そして驚き呆れたことに、私が辞める理由を聞いた先輩たちが「そういうのはいつもだよ、嘘をつかないと人が来てくれないから。」「そういう理由で辞める人が多すぎて、指導が入って以来、ハロワには求人を出していないんだよ」と言った事。こんなに大手のスーパーが、とんだブラック企業だと知ったのも驚きでした。そして今でも、そういう事は続いているらしいのです。