受付・診療助手のはすがバイトが処方

大学時代の話です。二部に通っていたので、昼間様々なアルバイトをこなす日々でした。大学生の定番のアルバイトである飲食店やコンビニなどを経験し、次はなかなか経験できないようなアルバイトをしてみたいと探していました。

ある日アルバイト雑誌を見ていると、家から通いやすい場所に「眼科受付・診療補助(誰にでもできる簡単な業務です)」という求人を発見。医院で働くのも面白そうだと軽い気持ちで応募しました。面接から数日後「受付業務は決まったので、診療補助業務をやってほしい」と連絡をもらい、すぐに働けることになりました。

初日はまず視力検査の方法を教えてもらい、先輩につきながら勉強しました。白衣まで着て、なんだか看護師さんみたいでかっこいい! などとそのときは呑気に思っていたものです。そのうち、眼圧を測定したり、屈折検査をしたり、機械を使った検査を教えてもらい、実際に患者さんの検査もするようになりました。

来院する患者さんはコンタクトレンズ処方の人が圧倒的に多い医院でした。 検査の方法を覚えるとすぐに、コンタクトレンズ処方を教わりました。 患者さんの屈折度数に合わせ、コンタクトレンズの度数を決めていくのが仕事です。 この時点ではまだ先輩の補助として教えてもらっていると思っていました。 しかし、だんだん理解してきたあたりで、実際患者さんを任されるようになりました。 視力を測り、機械で測定し、実際にコンタクトレンズを装着し、見え方を確認する。 コンタクトレンズの処方箋を書くのも仕事です。

医師は、目に異常がないかだけを確認し、コンタクトレンズ処方については知識がないようです。 後に知ったのですが、医院はコンタクトレンズを販売する会社が経営するもので、医師も雇われていたのでした。

アルバイトをはじめて数ヶ月もたたないうちに、私は来る日も来る日もひたすらコンタクトレンズの処方をし続けるようになりました。しかも仕事を教えてくれた先輩は、他の関連する医院にうつってしまい、私が勤務する日は私だけで検査から処方まで全てやることになっていました。わからないことがあっても質問できる人もいません。 「アルバイトにしては仕事が重過ぎる、全然診察補助なんかじゃない」と感じるようになりました。

何の資格もない、経験もないただの素人の大学生が白衣を着て、まるで医療スタッフのようにふるまいます。 目のことについて質問してくる患者さんもたくさんいるので、それなりに答えます。 中には「お医者さんですか?」なんて聞いてくる患者さんもいました。 「いえいえ、とんでもない、検査員です」と答えましたが、実際は検査員とも言いがたいほどのド素人です。 だんだん罪悪感さえ感じてきました。

あるとき、高校生くらいの若い患者さんが「ずっとコンタクトレンズにしかたったけど高いから、夏休みにバイトしてお金を貯めてきた」と目を輝かせて嬉しそうに言いました。そのときに私はハッとしました。欲しいもののために一生懸命バイトしてやっと買えるというときに、私みたいなド素人に処方されるのは、私なら絶対イヤだと! それでもう仕事を続けるのはやめようと決心しました。

その日のうちに社員に話をすると、「負担をかけているのはわかっている。出来るだけフォローするから残ってくれないか」と引き止められました。それでも止めると言い張ると、「せめて次の人が見つかるまではいてくれ」ということで、その条件はのみました。すぐにまたアルバイトとして入ってきたのは、なんと当時の私より若い19歳の男の子。今風の子でした。「これ、俺がやるんですか?」なんて言っていたので続いたかどうかはわかりませんが、若い子を安く雇い検査・処方をさせる、その体質は変わらないようでした。

アルバイト、パートでも、仕事を任されるとやりがいを感じたり、もっと上を目指したいというような意欲がわいてきて、プラスになることも多くあるでしょう。しかし、医療機関でそれは問題があると思います。「補助業務」には注意しようと、強く思った経験でした。